今回は、ハーバードメディカルスクール Dr.ウェインの「太極拳8つの要素」の3つ目について。
太極拳の8つの要素の3つ目は、
“Structural integration” (ストラクチュラル インテグレーション)
太極拳は全身運動です。
といっても、ただ全身を動かせば良い、というだけではありません。
動き、形が武術的な目的にぴったり一致する、「究極の全身運動」といっても過言ではありません。
太極拳の武術的な目的とは、一言で言えば、
「自分自身は安定を保ちながら、相手の力を弱めると同時に、バランスをくずす」
ということ。
ですので、相手よりも、リラックスした状態で、より柔軟に反応し、つねに安定していること、バランスがとれていることが大切。
そして、相手が動き続ける以上、自分も動き続けることもまた重要です。
ゆったりと、優雅で、水のようななめらかな動きが特徴的な太極拳の套路(型)は、「構造的に統合した状態」を保ち続ける練習といえます。
一言で言えば、全身が一つになっている、ということ。
構造的な統合、というのは、
「どんな形をしていても、上下、左右、前後のバランスが取れている」
ということ。
動いているときも、静止したときと同じくらいのレベルで安定しているということです。
そして、太極拳の動きはゆっくりなのに、難しいと感じたり、動きを説明するのが難しいのは「すべての動きが同時に起きる」からです。
「右手をこう動かすと同時に、左手をこう動かし、同時に腰をこっちに動かし、重心はこっちに移動」
というように。1か所の動きを説明しだすと体の全てのパーツの説明が必要になります。
また、ふつうは、動き出すと不安定になります。
それを静止した状態と同じくらい安定した状態を保つために、繰り返し練習します。
ぼくが20年間学んだ道場で、「指先が少しでも動けば全身運動」とよく諭されました。
この感覚は、気功の「氣」を知る上でとても重要です。
太極拳では、ツボと経絡を理解することは重要です。
経絡(エネルギーの通り道)を伸びやかな状態にするために、ツボの位置、向ける方向を意識するよう伝えています。
ツボはたくさんありますが、百会と会陰、労宮と湧泉、印堂(上丹田)、ダン中(中丹田)、気海(下丹田)、命門を意識することで、全身のバランス調整ができます。
また、太極拳の練習中だけでなく、日常生活においてもそれを活かすことができる点に大きなメリットがあります。
リラックスした状態で、自然な姿勢を保てるようになります。
100の(すべての)筋肉を下ろす、骨だけで立つ、といった表現もあります。
実際は筋肉で支えることなしに立つことはできないのですが、そのように意識することで無意識に緊張している筋肉を緩めることができるようになります。
全身の細かい筋肉をバランスよく使うことで、腰を痛めたり、転倒することなく、関節の負担を減らし、筋肉の無駄な緊張をなくし、疲れにくい体になります。
太極拳が、「ボディ・マインド エクササイズ」と呼ばれるように、心の状態が深く関係しています。