太極拳の8つの有効成分の5つ目は、
”Strengthening and flexibility” 強化と柔軟性
多くのエクササイズが、もっと遠く、もっと速くを目指します。
ですが、負荷がかかりすぎると、身体を痛めるリスクも高まります。
一方、健康エクササイズの一種である太極拳は、全体的な機能を、ゆるやかに強化します。
柔軟性を高めて、有酸素運動の能力が向上します。
太極拳の型では、剣や刀、棒などの武器、扇子や杖などを持つことはありますが、それほど重たいものではありませんので、重量物を持って負荷をかけて鍛えたりすることはあまりしません。
太極拳は中国武術の一流派ではありますが、空手や多くの武道、格闘技のように組み手をすることも少ないので、怪我をするリスクも少ないです。
ただし、無理に姿勢を低くしたりすると、膝を痛める原因になります。
(実際に太極拳で膝を悪くしたという話はよく聞きます)
ぼく自身は、25年やってきて、今のところ、膝を痛めたことは一度もありません。
姿勢を低くしすぎた時に、老師に「やり過ぎ」といって上から押し潰され(笑
それからは必要以上に姿勢を低くしないよう、氣をつけています。
関節のケアは、高齢になるほど、自分自身で状態を把握しながら、注意深く行う必要があるでしょう。
太極拳のゆっくりとした動きでほどよい負荷をかけます。
負荷をかけすぎると、動くことよりも、筋肉の緊張が上回り、動きが鈍くなります。
武術としても、相手の動きに対して、機敏に、軽やかに反応する必要があります。
そのためには、重心の移動がスムーズであることが大切。
脚をわずかに曲げ、重心を前後、左右、斜めに移動させ、両腕を揺らしたり、上げ下ろします。
比較的時間をかけて、その間は休むまもなく、連続した動きを続けるので、気温にもよりますが、やっているうちに、10分〜20分程度で、じわっと汗をかいてきます。
自然に呼吸が深くなりますが、息が切れるほど激しくはなく、終わった後は爽快感が残ります。
座ったり寝転がったりして行う「静的なストレッチ」と違って、つねに動きながらの「動的なストレッチ」が、可動域を広げます。
軽い、緩やかな、ほどよく負荷をかけた有酸素運動ですので、体力のレベルによって、自分がその時々の体調によって、どのように練習するかを選べる点にもメリットがあります。
病後や、体調を少し崩している人にとっては、健康な状態を取り戻すためのエクササイズになります。
全身に血流を巡らせることで回復も早くなります。
前述の通り、太極拳は中国武術の一流派です。
武術的な鍛錬を目的として、一つの動作から次の動作に動くときに、より速く動いたり、深く沈み込んだり、長い時間練習を続けることで、強化することもできます。
陳式太極拳に特徴的な「発勁」は、氣を瞬間的に、爆発的に使う動作です。
太極拳ではありませんが、ブルース・リーのワンインチ・パンチは有名ですね!
柔らかいパンチは相手の中に浸透します。
これが中国武術の特長ですね。
わずかな距離で、爆発的エネルギーが出せるようになるのも、リラックスと全身の動きの統合によって初めてなせる技。
病弱な人は健康に。
健康な人はより元気に、しなやかに、強くなれるのが太極拳のよいところの一つです。