太極拳で覚えておきたい用語集(2) 中国武術、太極拳の様々な流派

中国武術の主な流派

よく知られている中国武術の流派の英語、中国語の表記を表にまとめました。

仏教の影響を受けた外家拳の代表的な流派で、1500年以上の歴史があります。素早く力強い動きが特徴で、棍（こん）などの武器も使用します。

道教の理論に基づいた内家拳の代表的な流派です。ゆっくりとした優雅な動きが特徴で、相手の力を利用して攻撃を防ぐことを目指します。

南派の代表的な流派で、短く締まった動きと激しい攻撃が特徴です。現在、世界で最も人気のある中国武術の一つとされています。

18世紀に生まれた比較的新しい流派で、肘打ちや拳打ちなどの爆発的な動きが特徴です。近距離戦に適しているとされます。

12種類の動物の動きを模した「十二形」が特徴的な流派です。直線的で力強い攻撃を重視します。

円を描くように歩きながら技を繰り出す独特の動きが特徴的な内家拳の一つです。

これらの流派は、それぞれ独自の哲学と技術を持ち、中国武術の多様性を示しています。多くの流派が長い歴史を持ち、現代でも世界中で練習されています。

蟷螂拳は、カマキリの動きを模した独特の技法を持つ中国武術の一流派です。主に北派と南派に分かれており、特に北派蟷螂拳は中国北部の多くの武術を取り入れた総合的な拳法として知られています。その特徴として、素早い動きと連続攻撃、「蟷螂手」と呼ばれる独特の手技、そして複雑な足さばきがあります。

心意拳は、形意拳の前身とされる古い武術で、内家拳の一つです。直線的な動きと爆発的な力の使用が特徴で、五行の理論に基づいた技法を持っています。

酔拳は、酔っ払いの動きを模した独特の技法を持つ武術です。予測不可能な動きと柔軟な体の使い方が特徴で、主に南派の武術として知られています。実際には酒を飲まずに、酔っ払いの動きを模倣して戦います。

太極拳には様々な流派があります。

太極拳の発祥と流派の発展は、以下のように概説できます：

太極拳の起源は諸説ありますが、一般的に道教の哲学と中国武術の融合から生まれたとされています。伝説では、12世紀頃の道教の僧侶・張三丰が創始したとされていますが、歴史的な証拠は乏しいです。

現存する最古の太極拳は、17世紀に陳王廷（1580-1660）が確立した陳式太極拳です。陳王廷は、既存の武術や健康法を統合し、陰陽五行説などの中国哲学を取り入れて、独自の武術体系を作り上げました。

19世紀初頭、楊露禅（1799-1872）が陳家村で18年間修行し、陳式太極拳を学びました。その後、北京で教え始め、楊式太極拳を確立しました。楊式は動きが大きく流れるような特徴があり、健康増進に適していたため、広く普及しました。

楊露禅の弟子たちから、さらに新しい流派が生まれました。呉鑑泉が創始した呉式太極拳は、楊式から派生し、より小さな動きと独特の姿勢が特徴です。武禹襄が創始した武式（郝式）太極拳は、小さな円を描く動きと内的な気の発展に焦点を当てています。

20世紀初頭、孫禄堂（1861-1932）が形意拳と八卦掌の要素を取り入れて孫式太極拳を創始しました。流れるような動きと独特の足さばきが特徴です。

1956年以降、中国政府主導で競技用の簡略化された太極拳フォームが作られ、国際的な普及が進みました。2020年には、太極拳がユネスコ無形文化遺産に登録されました。

太極拳は、その長い歴史の中で様々な流派に分かれながらも、健康増進と武術としての価値を保ち続け、世界中で実践されています。