太極拳の8つの用法-掤,扌履,擠,按,採,扌列,肘,靠

太極拳

8つの用法とは?

太極拳の8つの基本用法である、「掤(ポン)」、「扌履(リュイ)」、「擠(ジー)」、「按(アン)」、「採(ツァイ)」、「扌列(リェ)」、「肘(ジョウ)」、「靠(カオ)」を一連の動作にとまとめた套路(型)について解説します。

参考動画:

伝統陳式太極拳八式

0.準備 

両脚を揃えて立ちます。両腕は脇を締めず、体側に自然に降ろします。 あごをやや引き、胸の力みを抜き、重心に偏りなくリラックスした姿勢を保ちます。 呼吸は静かに腹式呼吸で行います。 

動作説明
  1. 両手の指先で小さく縦に円を描きながら、重心を沈め、左脚を左斜め後ろに引き、つま先を着地します。 
  2. 両手首を内側に巻き込むようにねじりながら、左脚かかとを下ろし、左脚に重心を移動していきます。 
  3. さらに両腕を内側にねじりながら、最後は両手の指先を地面に杭を打ち込むように真下に向け、右脚はすり足で引き寄せ、バランスを取ります。重心の配分は左足に9割、右足に1割。
  4. 視線は動作開始時に一旦手元を見た後 、正面を向きます。
用法のポイント 

しっかりと腕をねじり、動作の最後で両手の指先の意識を1点に合わせます。仙骨を後方に出します。相手に両手を掴まれた場合、この用法で無理なく逃れることができます。 

1.掤(ポン, Peng)

ポンは下から上に向かう勁力で、相手の力を全身で受け留める、守るといった目的があります。八法の中で最も基本となる用法です。

動作説明
  1. 右手首で小さく円を描き始めると同時に左指先を右手首に添えます。
  2. 右脚を右斜め45°方向に踏み出して、かかとを着地します。つま先は正面に向けます。
  3. 右腕で徐々に大きく円を描きながら、重心を右脚に移動開始し、右つま先を着地します。
  4. 両腕で丸い形を保ちながらさらに進め、重心を右脚に乗せたら左足をすり足で引き寄せます。重心の配分は右脚に9割、左脚に1割。
  5. 視線は右斜め45°前方。手の先を見ます。
用法のポイント

動作の開始から停止まで、両腕でスムーズな円を途切れなく作ります。動作の最後に右腰をやや後ろに引き、体幹をしっかりねじるようにします。

3つの円の形(両腕の円、両脚の円、体幹の円)を常に意識します。この3つの円は、以降の動作も同様にしっかり意識します。

2.扌履(リュイ, Lu)

リュイは相手の力を受け流し、バランスを奪う目的で使う用法です。

動作説明
  1. 右手小指から順に右斜め前方に伸ばし、体の向きはわずかに左方向に転回します。
  2. 両手首を時計回りに小さく回し、回し終えると同時に左脚を左真横方向に踏み出し、かかとを軽く着地。つま先は正面を向けたままとします。重心は右脚に乗せたままで、重心は移動しません。
  3. 両手で相手の片腕を持ち、水平方向に流すように意識しながら重心を左脚に移して行きます。右手で相手の肘を、左手で相手の手首を掴んでいるような距離感をイメージします。
  4. 重心が左脚に十分乗ったら右足を左脚のそばまですり足で引き寄せ、かかとを浮かせます。
  5. 両腕は左斜め45°方向まで進め、視線も同様とします。
  6. 重心の配分は、左脚に9割、右脚に1割。
用法のポイント

両腕で相手の片腕を直線的に引っ張るのではなく、相手の中心を奪うように、両手で相手の力をバランスさせて、自分の円の動きに引き込むようにします。

3.擠(ジー, Ji)

バランスをくずした後に、正面に向かって押す動作です。

動作説明
  1. 手の甲側の手首を出す動きで、両手首を正面に戻します。
  2. 両手のひらを上向きに返しながら左手で右手首を払うように交差させます。 
  3. 両手のひらを上に向けたまま、外向きに回していき、両手首を首のそばに引き寄せると同時に右脚を持ち上げます。 
  4. 持ち上げた右脚を前方に踏み出すと同時に、両手のひらを前方へ向け押し出します。 
  5. 持ち上がった左脚を短く前に引き寄せ、かかとを降ろします。つま先が地面から離れないよう素早く行います。ひざは突っ張らない程度で伸ばします。
  6. 重心の配分は、右脚に7割、左脚に3割。視線は両手の先を見ます。
用法のポイント 

右足を上げるタイミングで体が浮き上がらないようやや沈み込み、全身の意識を丹田に集めます(蓄勁)。 押し出す両手のひらはお椀のように丸い形で相手の中心を捉えるようにします。 

4.按 (アン, An)

下向きに押さ込み相手のバランスを崩します。相手の反射的な上向きの反発力をうまく利用します。

動作説明
  1. 指先を小指から順に折りながら両手首を上に突き出すと同時に左脚のつま先を後ろに引きます。重心は右脚に保ち、やや沈みます。 
  2. 左脚のかかとを降ろし、重心を左脚に移しながら、両腕を上から押さえつけるように降ろします。 
  3. 右脚かかとを浮かせ、すり足で引き寄せ、バランスを取ります。 
  4. 重心の配分は、左脚9割、右脚1割。視線は下方の下ろした両手の先を見ます。
用法のポイント

手首を突き出す際の指先の動きが重要。 相手の両肩をなぞるように指先を使い、まず相手の体を浮かせたあと、押さえつけて崩します。 

5.採 (ツァイ, Cai)

ツァイは、採る、掴むことを意味しており、相手の勁をこちらに吸い取り、虚の状態にします。

動作説明
  1. 両手の手首を右側に出しながら前面を守るように円を描き、左斜め上方向まで回します。回す途中で両手首を交差させます。
  2. それと同時に右足を右斜め後方に出し、つま先を着地。重心はまだ左脚に保ちます。 
  3. 右足かかとを着地させ、重心移動を開始。同時に両手で相手の腕を引っ張るように右斜め下まで運びます。
  4. 左足を右足そばへすり足で引き寄せます。左足かかとは浮かせます。
  5. 手足の動きに合わせ、最後に腰を右斜め下に突き出します。 
  6. 重心の配分は右脚9割、左脚1割。視線は両手と腰の動きが1点に集まる所を見ます。
用法のポイント 

レンズの焦点に光が集まるように、全身の動きを、動きの延長線上の一点に集めるようにします。 

6.扌列(リェ, Lie)

リェは正反対に働く力を利用して相手の中心を崩す用法です。

動作説明
  1. 両手の指先を内側に巻き込み、ボールを抱えるようにします。
  2. 左脚を前方に踏み出し、かかとを着地。
  3. 重心を徐々に左脚に移しながら両手で縦向きに棒を持つような形を作り、右腰辺りから体の中心に沿って胸の前まで持ち上げていきます。
  4. さらに重心を前方に移しながら、両手を喉元から縦のアーチを描き、前に押し出します。
  5. 重心の配分は左脚7割、右脚3割。視線は両手の先を見ます。
用法のポイント

動作の終わりに、両手首をうまく利用して、縦の曲線を意識します。これによって相手の中心部を操作しバランスを崩すことができます。両脇を締めないよう注意します。

7.肘 (ジョウ, Zhou)

ジョウは、肘鉄という言葉があるように、硬くて小さい範囲に勁力を集中させます。

動作説明
  1. 右手の指先を親指から順に伸ばし、短く刺すように突き出します。右手の動きに合わせ腰を短く回します。左手は右手首に添えます。
  2. 右手を止めた反動で戻し、拳を徐々に握りつつ右腰に引き寄せながら、右脚を前方に踏み出しかかとを着地。左手は右手首に添えたままとします。重心は左脚に保ちます。
  3. 右肘を少しずつ前に出しながら、右脚に重心移動を開始。
  4. 胸をかぶせるように前傾となり、肘を前に出します。左脚はまっすぐ伸ばします。
  5. 重心の配分は右脚に7割、左脚に3割。視線は下方やや左方向。
用法のポイント

肘を使う時、腕を振り回すのではなく、全身の重心移動で打つ意識を持ち、左肩が後ろに逃げないよう、両肩を合わせる意識で行います。

8.靠 (カオ, Kao)

カオは、寄りかかる、体当たりといった意味です。大きく重心移動しながら、相手にぶつかっていく動作です。頭、肩、背中、腰などを利用します。

動作説明
  1. 右手小指から順に前方に跳ね上げるように出します。左手は右手首に添えたままとします。
  2. 左脚を前方に踏み出しかかとを着地すると同時に両手のひらを返し、両手の手の甲で前方を押します。
  3. 左手指先から右方向にカーブを描きながら徐々に下向きに進め、その動きに合わせて左脚かかとを軸にしてつま先を内側に回して着地。右手を左手首に添えます。 
  4. さらに左手指先を下にむけ、腕をねじりながら真下に向かって杭を打ち込むように指します。 
  5. その動きに合わせて体の向きを180度反転させ、重心を左足に移し、右足をすり足で円を描きながら左足のそばに引き寄せます。腰をねじりながら左側に突き出します。
  6. 重心の配分は左脚に9割、右脚に1割。視線は左肩越しに左側を見ます。
用法のポイント

両手首を返す時に相手の体に当てるイメージをして、手首、腕、肩、腰の順に連続的に相手に当てていくようイメージします。

 

9.収式

8.カオの動作のあとは、反対方向に向かって再び1.ポンの動作から順に行います。通常6セット(3往復)行います。

6回目の8.カオが終わったところで、両手を交差させ手のひらを上に向け、右脚を右斜め45°に踏み出し、さらに周りを押しのけるように両手を大きく広げて右脚へ重心移動していきます。右脚に十分重心が移ったところで左脚を右脚に引き寄せそろえます。両手首を首のそばに引き寄せたあと、ゆっくりと両手を降ろすと同時にひざを伸ばし、最初の姿勢に戻ります。

 

実際に体験してみたいという方、当協会が主催するイベントにぜひご参加くださいね!

 

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